ホノルル高速鉄道「スカイライン」開通、その実用性と今後の開通計画を検証

ホノルル高速鉄道「スカイライン」開通、その実用性と今後の開通計画を検証

更新日 2023.11.30

ホノルルの高架鉄道システム「スカイライン」が、2023年6月30日、運行を開始した。「長らく待った甲斐があった」「車から見る景色と違うので新鮮」。市民からはこんな声が聞かれたがその実用性はいかに? 編集部がレポートする。

目次

2023年6月30日ようやく開通したホノルル高速鉄道「スカイライン」  

6月30日に開通したのは、東カポレイとアロハスタジアムを結ぶ11マイル、9駅の区間(時間は片道約21分)。最終のアラモアナセンター駅まで開通すると乗車時間は約40分と推定されているので、ちょうど中間地点まで開通したことになる。6月30日初日には午後2時の初運行に合わせ、午後1時30分に最初の乗客約200人が改札を通過。午後2時30分頃には1千人以上がハラヴァ駅に列を作った。初日は午後2時から6時まで全ての乗客に対してゲートを開放し、7月4日まではハワイ州発行のICカード「HOLOカード」提示で無料で乗車できた。この期間に7万人以上が乗車したそうだ。



この鉄道システムは今後、ダニエル・K・イノウエ国際空港、ダウンタウンを経由し、アラモアナセンターまでのルートが計画されている。各区間の詳細は以下となる。

【プロジェクト第1区間】今回開業した東カポレイからアロハスタジアムまで。11マイル、9駅で所要時間は21分。

【プロジェクト第2区間】アロハスタジアム駅からダニエル・K・イノウエ国際空港駅を通過し、カリヒ地区のミドルストリート駅まで。工事がほぼ完了しており、2025年に開通予定。

【プロジェクト第3区間】ミドルストリート駅からホノルルのダウンタウンを通過し、カカアコのシビックセンター駅までの区間は、2031年までに完成する予定。シビックセンター駅が現在のプランでの終点。

【プロジェクト第4区間】シビックセンター駅からアラモアナセンター駅までの残り2つの駅が最終目標。開通予定は未定だ。

 駅にはトイレがない

 全4両編成の車両は、立っての乗車を含めると最大800人を収容できる。車内にWi-Fiとエアコンを完備し、自転車やサーフボード置き場もある。車両は日本企業の日立が開発し、電動で完全自動運転。無人運行となる。そのかわり24時間体制でオペレーションセンターが全ての列車の動きを管理する。無人運行はアメリカでは初で、日立はこのシステムを今後アメリカ本土にも展開する計画。日立にとってハワイは壮大なマーケティング装置としての役割もあるわけだ。2031年第3区間まで開通した時点での鉄道利用客数は平日で約8万4000人になると推定される。

無人運行の鉄道システムを監視するオペレーションセンター。

 大規模な駐車場を備えているのは現在開通している中では3駅だけで、駅までの交通手段を心配する声もあがっている。駅周辺の開発も課題で、例えばカポレイ駅から最寄りの大型ショッピングモール「カマカナアリイ」まで2マイル(約3.2㎞)、パールリッジ駅から最寄りのショッピングモール「パールリッジセンター」までは0.5マイル(約800m)と距離がある。ホノルル市は今後、東急や京急など日本の駅周辺の都市開発で実績のある企業を誘致する計画もあるというが、具体的なプランはまだない。また、もう一つ心配の声があがっているのが「各駅にトイレがない」ということ。実際には「緊急時に使用できる従業員用のトイレは駅に1つは設置している」(市当局)というが、ただでさえ一般利用が可能なトイレが少ないハワイでこれは悩ましい点ではある。


 さらに予算の問題もある。当初30億~40億ドル(約4330億~5770億円)とされた事業費は、人件費や材料コストが値上がり、2022年の試算では100億ドル(約1兆4330億円)を超えると試算された。財源は在住者や観光客からの税金収入だ。予算確保がままならず工期は常に遅れ、今回開通した区間も元々は2017年に開業しているはずだった。アラモアナセンター駅まで開通すれば、車の渋滞を気にせず空港と行き来できるなど観光客にとってもメリットがあると思われるが、現状では事業費不足のため開通は未定だ。以下にQ&A形式で、利用にあたっての情報をまとめた。

ホノルル高架鉄道「スカイライン」Q&A

運行スケジュールは?

10分毎の運行を予定。平日(月~金)朝5時~夜7時まで、週末(土~日)と祝日は朝8時~夜7時まで。2025年の第2区間開通時には延長され、平日午前5時~午後11時まで、週末午前5時~夜中0時まで、運行もピーク時6分毎になる予定だ。

ザ・バスとの接続は?

ザ・バスに乗り換える場合、HOLOカードで運賃を支払った2時間半以内であれば、運賃の支払いなく乗車できる。以下の駅はザ・バスとダイレクトに接続できる。ハワイ大学西オアフ駅/ウェストロック駅/ワイパフ・トランジット・センター駅/パールハイランズ駅/アロハスタジアム駅

駅に駐車場はある?

以下の3駅には駐車場が用意される。アロハスタジアム駅(590台分)/ハワイ大学西オアフ駅(304台分)/ホオピリ駅(344台分)

ハワイ州初のICカード「HOLOカード」とは?

HOLO(ホロ)カードは、スカイラインと共にザ・バスにも乗車できる共通ICカードで、各駅での販売のほか、フードランド、セブンイレブンなどで購入が可能。「HOLO」とはハワイ語で「乗る」、「行く」を意味する。HOLOカードで運賃を支払った2時間半以内は、運賃の加算なくザ・バスとスカイラインの乗り換えが可能。1日および1か月の上限料金が設定され、上限に達した後は追加料金を支払う必要はない。例えば、1日7・50ドルを超えて利用した場合はそれ以上の支払いは生じない。乗車する際は、各駅の改札口にあるHOLOカードのリーダーにカードを「タップ」する。改札横には、HOLOカードの自動販売機も設置される。HOLOカードの本体価格は2ドル。
HOLOカードの詳細:www.holocard.net/ja/

乗車運賃は?

大人(18歳以上)運賃は片道3ドル。1日料金:7・50ドル(上限)月間料金:80ドル(上限)※ユース(6~17歳)とシニア(65歳以上)は乗車料金が異なり、顔写真付きのHOLOカードが必要。

ホノルル高架鉄道輸送機構
ロリ・カヒキナCEOインタビュー

開通初日のイベントでスピーチするホノルル高架鉄道輸送機構のロリ・カヒキナCEO。

最も困難だった点は?

数十年にわたる鉄道計画で、多くの課題に直面してきました。ホノルル市初のインフラプロジェクトで税金を使っているため、多くの機関と市民の承認を得 ることが必要でした。米国本土から輸送される車両部品や技術者の確保にも苦心しました。現在も、路線に必要な不動産の取得に課題が残っています。

日立とはどのような点で連携を?

日立は鉄道車両を建造し、列車制御および通信システムを提供および設置しました。非常に協力的かつ前向きな関係を築いており、現段階に到達するまで日立に大きく依存しているのは事実です。

特に誇れる新技術は?

米国初の完全自動運転の都市鉄道システムという こと。また全ての鉄道駅にゲートが設置されますが、 これは乗客の安全性を高める重要な機能で、米国で はまだ希少です。電力供給装置が線路に隣接して配 置される「サードレール」も新しい技術です。

車両の特徴は?

オープンタラップと呼ばれ、4両編成の列車全体が内部でつながり、出入口を通らずに車両の先頭から最後尾まで歩けます。無人車両内の安全確保のためセキュリティカメラが各所に設置されています。

終点のアラモアナにはいつ到達?

2031年にカカアコ地区のシビックセンター駅まで 延長されるのが現時点での最終計画。アラモアナセ ンターまで1マイルの路線延長時期は未定です。


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CEOのインタビューを実施した6月末から約5ヶ月経過した、2023年11月の最新情報として、連邦政府が、ホノルル高速鉄道「スカイライン」プロジェクトへ1億2500万ドルの資金援助を承認というニュースが入ってきた。

これにより、棚上げになっていたカカアコ、アラモアナの2駅分の完成への可能性をロリ・カヒキナCEOが改めて言及するなど、都心部までの延伸への期待が高まっている。 


今後も少なくとも2031年までは続く足の長いプロジェクトだが、今後もハワイに住むでは続報を入れていきたい。

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