ハワイで作る日本酒「アイランダー・サケ」。33年ぶりにハワイに生まれた日本酒の酒蔵

ハワイで作る日本酒「アイランダー・サケ」。33年ぶりにハワイに生まれた日本酒の酒蔵

更新日 2020.08.14

この2020年3月、このハワイに33年ぶりに、日本酒の酒蔵が誕生した。それがハワイ生まれ、令和元年創業の日本酒の醸造メーカー「アイランダー・サケ・ブリューワリー」。日本人にはうれしいニュースだ。

150年前に始まったハワイ日系移民の歴史。その暮らしと共にあったハワイでの日本酒づくりは、33年前に最後の酒造メーカーがなくなってから途絶えていた。その火が、もう一度灯ったのだ。

カカアコ地区の中でも渋いエリア、自動車修理工場や建設関連の会社が並ぶクイーンストリートの一角にある酒蔵で、「アイランダー・サケ」のオーナーお二人にお話を伺った。

醸造研究者の高橋さんと、お酒の販売のプロ・弘瀬さん
二人のタッグで始まった「アイランダー・サケ」

醸造研究家の高橋ちあきさん(左)
お酒の販売のプロ、弘瀬Tamaさん(右)

このアイランダー・サケを運営するのは、「お酒の醸造のプロ」である高橋さんと、「お酒を販売するプロ」である弘瀬さんのお二人。

高橋さんは、酒類総合研究所や、岡山理科大学などで醸造や酵母の研究を行い、教鞭も取られていた「醸造酒作りのプロ」。根っからのハワイ好きだった高橋さんが、全米日本酒歓評会の審査員としてホノルルに招待されたり、「Joy of Sake」イベントなどに参加する中で、いかに日本酒がハワイで愛されているかを知り、感銘を受けたという。そこからいつか「おいしいハワイの水で、おいしいお酒を造りたい」という夢を抱くようになったのだそうだ。

そこにハワイ在住経験のあったお酒の営業のプロ・弘瀬さんとの出会いが重なった。二人がチームを組んだことで、「アイランダー・サケ」の夢が一気に実現へとつながっていった。

資金調達として、クラウドファンディング「makuake」に参加。560万円以上のサポート(目標100万円に対して560%の達成率!)と、人々のロマンを掻き立て、熱い応援の後押しでを受けてスタートした「アイランダー・サケ」。
 

makuakeでのクラウドファンディング
しかし実際は構想が固まってから、この2020年3月に販売を開始できるようになるまでの道のりは波乱万丈だったのだという。

苦節4年、ようやくオープン。
いくつもの「時の運」に助けられて

 高橋さんは日本での仕事をつづけながら、4年ほど前から休暇を使って視察や準備などでたびたびハワイ入り。ハワイでの酒造りの歴史、醸造可能な用地探しなど起業準備を始めた。しかしハワイに住んでいないがゆえに、借りたかった場所が他の人に横取りされてしまったり、契約関連のトラブルがあったりと、海外起業にまつわるゴタゴタは一通り経験したそうだ。

 Eビザ(投資家ビザ)が取得でき、ハワイでの起業と移住への目途が立つまでに結局2年ほどかかったという。

しかし、この2年の回り道が思わぬ幸運をもたらした。

2018年にハワイで作られたばかりの新しいリカーライセンス「スモールクラフト・プロデューサー・パブライセンス」が取得できたのである。


ハワイでのリカーライセンスの取得はかなり厳しいことで知られている。そんな中、お酒を醸造するだけでなく、酒類販売と飲食事業をもすべて一つのライセンスで行うことができるマルチな新カテゴリーのリカーライセンスがちょうど作られたのだ。これは、ハワイで続々生まれているクラフトビールなど小規模な醸造所からの要請で生まれたもの。「クラフト・ブリューワーリー」ブームで機が熟したところに、創業のタイミングがぴったり合った。

これにより、「アイランダー・サケ」も、自社で作ったお酒の販売はもちろん、輸入した日本酒の販売、また酒蔵隣接のスペースでは日本酒とペアリングしたお料理も提供と、小さいながらも「フルサービス」できる酒蔵が誕生した。

 

 そして、もう一つの時の運が、2020年3月12日のオープン直後に見舞われた「コロナによるロックダウン」。

高橋さん:

 オープン前までは、どんなターゲットで、このブランドを育てていけばいいのか?と、定まっていなかったんです。日本からの観光客の方、ローカルの方、またアメリカの本土からの富裕層、どこに軸を置けばいいのか、と。

そんな中、オープンしてみたら即ロックダウン。それでも、ローカルの皆さんはこんな小さな酒蔵まで足を運んで何度も買いに来てくださり、応援してくださる。 「ああ、これでよかったんだな、ローカルのお客様を大切にしていたら大丈夫、ということだったんだな」と思いました。

もしも、コロナ前の状況でオープンしていたら今頃いろんなお客様の対応に追われて、自分たちのお酒造りを見失っていたかもしれません。
 

皮肉なようだが、ロックダウンによってブランドとしての軸が定まった。コロナの真っただ中での起業となったことを、「ラッキーでした」と明るく話す高橋さんと弘瀬さん。

さて、お二人が目指すお酒作りはどんなものなのだろう。

ハワイだからこそ作れる
「フレッシュ」で「ピースフル」なお酒を目指して

「アイランダーサケ」で一回の醸造で仕込むお米は300キロ。3段仕込みで35日で出来上がる。年に11回、一回1500本が作れ、飛ぶように売れていく。

洗米の状態をチェックする弘瀬さん

高橋さん:

 私はワインも含めた醸造の研究者ですが、日本のお酒造りの厳しさ、ストイックさというのは世界一で、日本人の素晴らしさだと思っています。 お酒を極限まで磨き込んで雑味を無くし、ピュアな味わいを追求する完璧主義な日本人の性質が味わいにも反映されています。
 
でも、私がハワイで作りたいのは「ハワイのおいしい水と、日本のおいしい米」を使った「ピースフルでフレッシュなお酒」です。

たとえば1時間で15枚も手袋を交換するほどの厳しい管理のもとで行う専門的な工程がある一方で、たくさんのボランティアスタッフに手伝ってもらっている工程もあります。

醸造のプロである私が「ここだけは絶対外せない」という工程さえ押さえれば、あとは仲間が楽しく集まっておいしいお酒を造ろうという気持ちのほうが大事で、これがハワイらしいお酒の味わいに必ず反映されると信じています。

蒸しあがったお米。
これからタンクに仕込むところ。
タイミングがあえば製造工程も見学できる。


お米は、「奇跡のりんご」で知られる木村式自然栽培で作られた岡山のお米を、ハワイのお米販売店ライスファクトリーさんの苫小牧ーハワイの定期チャーター便にて運んできているという。

醸造用のタンクなども特注で、望める最上の機器類を集めたそうだ。

広瀬さん:
 日本酒というのは、どんな食事でも引き立ててくれるお酒ですねと、シンガポールの方に言われたことがありますが、その通りだと思います。

 ワインなどは個性が強すぎて、落ち込んでいたり、疲れていたりする時は飲む気になれないこともありますが、日本酒は、どんな時代、どんな気分の時でも「寄り添ってくれるお酒」です。

  そして、ハワイのフレッシュな食材で作られたお料理、このハワイで作られた、しぼり立てのフレッシュなお酒は、当然合います。これから、ハワイのレストランなどでも飲んでいただける機会が増えてくると思います。


また、弘瀬さんのお見立てによる日本から仕入れた日本酒も取り扱っているので、「アイランダー・サケ」とあわせて飲み比べしてみるのも楽しい。


 

ローカル向けにはパチンと止めるだけのボトルで販売されていて、まさにそこで絞りました、という雰囲気だ。「フレッシュなしぼり立てのお酒なので1カ月以内に飲み切ってほしい」と高橋さん。

ふつうの日本酒と、にごり酒があり各$21。感動的なおいしさの甘酒$7も販売中。
ボトル類もリサイクルで再利用しているので、飲み終わったら次のお酒を買いがてら、空き瓶はまたアイランダーサケへ持参してほしい。

またランチ、ディナーと、日本酒ペアリングの楽しめるお食事も予約可能となっている。

アイランダー・サケ
住所:753 Queen St. Honolulu 96813
電話:(808) 517-8188

営業時間:
火~土(日・月 定休日)
11:00-22:00 ※ランチとディナーは要予約

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