
日系アメリカ人の父と日本人の母のもとに生まれ育つ。ハワイ大学ロースクール(法科大学院)を2年で修了し、ハワイ州・ワシントン州の司法試験に合格。2021年に独立し、ADVIS法律事務所を設立。相続・遺産計画、信託管理、プロベートを専門とし、日英でのバイリンガル対応が可能。
アドビス法律事務所のマロッツ有沙弁護士に聞きました
「日本と大きく異なるアメリカでの相続・遺産計画。
どのように備えておくべきですか?」
マロッツ弁護士:
仲良くやってきた家族が、相続をきっかけに絶縁してしまう——。私はこれまで、そうした場面を何度も見てきました。「何も相談されていなかった」「自分だけ知らされていなかった」。争いの原因は、財産の額だけではなく、多くの場合、家族それぞれの思いや感情の行き違いにあります。ハワイに不動産などを持つ日本人にとって、相続は国をまたぐ複雑な課題でもあります。だからこそ、相続対策は財産及び家族の絆を守るための準備だと考えます。
一般的に、日本とアメリカでは相続制度が大きく異なります。日本では人が亡くなると相続が始まりますが、米国では原則として「プロベート」と呼ばれる裁判所の手続きを経なければ、家族であっても銀行口座や不動産などのすべての資産を一切動かすことはできません。この手続きには通常、半年以上かかります。
一方、日本の相続税の申告・納付は、原則として死亡から10か月以内。米国でも、一定の場合には連邦遺産税の申告が必要となり、期限は原則として死亡から9か月以内(延長により最長15か月)です。米国財産は凍結されたままなのに、納税期限は容赦なく迫ってきます。資金の準備に苦労するかたは決して珍しくなく、ご家族が慌てて相談に来られるケースが後を絶ちません。
こうした負担やトラブルをできる限り避けるために行うのが、遺産計画(エステートプラン)です。トラストや遺言の作成、受取人指定の見直し、委任状の整備などをあらかじめ行うことで、プロベートを回避できる場合があるほか、ご本人の意思に沿って財産を円滑に承継しやすくなります。ご家族構成や資産の内容、将来のご希望は一人ひとり異なるため、それぞれの状況に合わせたプランをご提案しています。特に、日米の両方に財産をお持ちの方は、双方の法律が関係するため、何もしないまま相続を迎えると、リスクが格段に高まります。「まだ元気だから、遺産計画は早い」と思われるかたも少なくありませんが、対策はいつからでも始められます。「もっと早くやっておけばよかった」という声を、本当によく耳にします。事前の一手は、事後の百手に勝る。問題が起きてから対応するよりも、経済的にも心理的にも負担を大きく減らすことができます。もうひとつ、見落とされがちなのが、認知症などで判断能力を失った場合への対策です。たとえ家族でも、法的な権限がなければ手続きを進めることはできません。元気なうちに大切な資産をどうしたいか、自分の意思を示して、必要な手続きをしておけば、思いを実現できます。それこそが、遺産計画の本来の目的です。
日米の制度の違いに戸惑う方からのご相談が増えるなか、日本語でハワイ州・米国のエステートプランニングをご案内できる弁護士はまだ多くありません。そのニーズに応えたいという思いから、この分野を専門に取り組むようになりました。相続やご家族の将来のことなど、どうぞお気軽にご相談ください。日米双方の専門家と連携しながら、国際相続案件をサポートしています。
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