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入り口として「不動産」に関するご相談が最も多いです
佐渡山先生:
日本人の方からのご相談のきっかけとして最も多いのは、「不動産」に関するものです。
エステートプランニングでは、さまざまな資産が対象になりますが、その中でもやはり不動産は金額が大きく、資産の中心となるものだけにご相談件数が多いのもうなずけます。
不動産のご相談に来られるきっかけはそれぞれですが、こういったケースが多いです。
ハワイで不動産を購入した
不動産購入時に、不動産エージェントや知人から「ハワイでは亡くなったときに不動産の相続手続きが大変だから、トラストを作っておいた方がいいと勧められた」と相談に来られるケースは多いです。
個人名義の不動産を配偶者や子供に相続したい
個人名義のハワイ不動産を所有している方が、将来の相続を考え始めたタイミングで、ご相談に来るケースもあります。
上記の二つは、お話を聞いてみるとトラストよりもシンプルな解決策で済むケースも多いです。
所有者が何の準備もせずに亡くなった際には裁判所のプロベート(遺産管理手続き)の対象となり、相続に時間も費用も要します。
しかし、不動産が主な資産で、相続したい相手もシンプルな場合には、死後譲渡証書 Transfer on Death Deed (TODD) という手続きを行うのがベストです。不動産を相続したい人に対し、TODDを設定しておけば、ご本人が亡くなった際に予め設定された相続人に、その所有権が自動的に移転し、プロベート手続きが不要になります。
「トラスト」を作るべきケースとは?
では逆に「どういう人がトラストを作るべきなのか」という質問もよくいただきます。次のようなケースではトラストを作るメリットが大きいといえます。
未成年の子供のいるファミリー
まず、未成年の子供がいる親御さんが「子供が成人前に自分たちに何かあったら」と考えトラストを設定するケースです。未成年の子供に資産を一括で相続させることは現実的に難しいため、受託者を通じて必要に応じて分配し、子供が一定の年齢に達するまで管理する、そして成人した場合に一定額ずつを受け取れるようにする、といった仕組みを整えるケースがよく見られます。ご自身に何かあった場合には、まず配偶者に相続されます。しかし、その先のお子様のケアまで二段階先のプランをしておくにはトラストが最適です。もちろん離婚をしてシングルペアレントになったご家庭でも同じように準備される方もいます。
アメリカでは若いファミリーでもトラストを早くから導入するなど、その考え方が浸透しているのも日本とは大きな違いですね。
法定相続以外のルールで資産を管理・相続したい
子供が成人しているケースでもトラストを活用する事例があります。法定相続のままでは意図しない分配になってしまうことを避けるために、トラストを活用することで自分の意思に沿った分配が可能になります。例えば、ご自身が亡くなった際に、お子さんに一律に相続するのではなく、異なる資産を子供に残したいという意向がある方はトラストでそれを指定します。さらに家族関係が複雑な場合もトラストを検討される方が多いです。たとえば再婚家庭で、前妻や前夫との子供がいる場合や、兄弟姉妹との仲が良くないなどのケースです。「法定相続人には相続させたくない」「代わりにチャリティーに寄付したい」といった場合にもトラストを設けることで、自分の意思を明確に残すことができます。
資産規模が大きく、複雑な方
さらに、資産規模が大きい方やそのご家族にとってもトラストの恩恵が大きいでしょう。複数の金融口座や不動産・年金などあちこちにある資産をトラストで一元管理することにより、手続きの煩雑さを大きく軽減できます。このようにトラストは、単なる相続の手続きを避けるためだけでなく、残す側の意思を確実に実現するための有効な仕組みです。しかしトラストを託された後任受託者が、そのトラストの内容を伝えられておらず、「親が亡くなったのだがトラストがありました。一体これをどうしたら良いのですか?」というご相談もあります。
抵抗がある方も多いのですがトラストを組む以上、やはりご自身の資産を明らかにし、関係者と共有しておく事は大切です。
日本帰国やハワイ資産の今後の相談。親世代からも子世代からも増えています
日米どちらからも増える国際的な資産の相談
最近増えているのが、日本・ハワイ両方から、ハワイにある不動産や資産について、将来の相続をどうすればよいかという相談が増えています。
これもさまざまなケースがあり、親世代のご本人から、または親世代を心配するお子さんからもご相談がきます。
例えば親が所有してきたハワイの別荘。若い頃は家族で毎年ハワイに来て楽しんでいたものの、子供たちが大きくなるにつれて利用頻度が減ってきた・・・・といった段階で、売却すべきか、子に相続するべきか?また子世代にとっては親御さんになにかあった時どうなるのかな?など、それぞれの立場でご相談をいただきます。
ハワイから日本への本帰国の相談
また、ハワイに長く住んでいた日本人の方の本帰国に関する相談も増えています。「数年後に日本に戻る予定だが、その間にアメリカの資産についてどう準備すればいいのか」「国籍や永住権、税金や年金などはどうなるのか」「アメリカの不動産を所有したままでいいのか?売却すべきか?」などのご相談です。
本帰国に伴う法務では、永住権やソーシャルセキュリティの扱い、税務上の対応なども含めた検討が必須になります。税理士や会計士と連携しながら進めることが一般的です。
実際にしっかりしたクライアントの方はそのことを理解しており、弁護士と会計士をそれぞれ確保し、綿密に連携しながら準備を進めています。
何年後に帰国するのかタイミングや滞在予定年数によって、準備の内容も大きく変わります。早めに相談を受け、必要な対策を取っておくことが安心につながるのです。
まとめ
エステートプランニングはご家族のコミュニケーションが取れていて、資産構成がシンプル、法定相続のルール通りで揉めないことがわかっているならば、比較的簡単な準備だけでよいケースもあります。
しかしいまや、世界のいろいろな場所に資産を持つ方、また国籍やビザがご家族の中でもバラバラなファミリー、離婚や結婚により家族関係が複雑になっている方も、多くなっています。
心配事がある方はぜひお早めにご相談ください。ご自身の資産を守り、ご自身の思いを反映したエステートプランがある事は、安心にもつながります。
GO法律事務所では、日米の税務に精通した「山田&パートナーズ」などと連携し、包括的なエステートプランニングのサービスを提供しています。将来への備えを始めたいという方は、ぜひ一度ご相談ください。
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